電気通信の高速化は消費電力とそれに元なう放熱との戦いです。高速な電気信号は減衰が激しく今や基板内の数センチの距離でも減衰を補うために大きな消費電力を必要としています。
それに対し、光による通信は高速化に対して消費電力の上昇があまりありません。物理的に光そのものの情報量に対する許容度が電気に対して遥かに高い為にまだ限界が見えていない程です。
それならば、通信の制御を電気に戻さず光のまま行えば消費電力の上昇を抑えつつ高速化が出来ると言う話は太古からされています。でも、具体的実装は観えない。何故なのでしょう。
何らかのパケット形式にしたときに、その振り分けに関しては幾つかの方法があります。波長を観て行うもの、ラベル部分だけ電気的信号にして情報本体は光のまま扱う方法等。
物理的、波長なり出力先の経路を高速で切り替える技術も既に存在しています。
問題は、振り分けではなく合流なのです。
現在電気信号処理によって行われている通信ネットワークの中心に位置するルータの主な仕事は、宛先を観て振り分ける機能だけではなく、合流してきた情報を如何にロスすることなく限られた回線容量に収めるかです。一般的には「バッファ」処理を行い、集合してきた情報が時間的に衝突した場合に一時的に待機させて出力回線に空きが出た時に送り出す機能です。
この機能の差がISOモデルでのルータとスイッチ(ブリッジ)の機能差以上に現実の製品実装では大きな差であることは別な記事にも書きました。
この重要な機能を電気信号に変換せずに光のまま処理する方法が現在のところ見当たらないと言えるでしょう。
まず、衝突検出が難しい。光のまま処理を行うと言うことは内容を電気的信号に一度戻して判断する仕組みが使えませんのでデータが存在するかどうかの判断も簡単ではありません。単純に光信号を混ぜる事は可能ですが衝突をそのまま放置すると信号が乱れ最終的に復元不可能はデータになってしまいます。
衝突検出が出来たとして、少し遅く来た情報を待たせる方法がありません。光の遅延ループ回路に誘導するアイデアなどはありますが現実的な実装には至っていません。
考え方を変えて、衝突した場合は遅い方の情報を無条件に破棄するアイデアもあります。これは、情報量に対して回線容量が十分である時は衝突の確立が極めて低い事を前提としています。
結局、現時点で実用的な光ベースでの回線制御は。障害時に回線を切り替えるか。回線設定時に合流の無いパスを確保するものでしかありません。とても、現在のインターネットの様にベストエフォートで有りながら高い経済性をもって高速化を実現する処理を担えるものでは無いのです。
インターネット以前のSVC的なネットワークが近年実用的でないと判断されていることを忘れてはいけません。
何か数値的な性能向上以外のブレイクスルーが求められています。