未だに、「この製品はDOMをサポートしていますか?」と聞かれます。
10年以上前の常識が未だに、この手の手順は古臭い”マニュアル”に残っているのでしょう。
1G SFPのいわゆる”社外品”、純正品をリバースエンジニアリングした製品を販売するのがサードパーティ光トランシーバーの標準だった時代は各機器ベンダーが備える、光レベルの受信レベルをモニターする機能DOM(Digital Optical Monitoring)を備えているものと、備えていない製品が存在しました。それによってコストも異なります。
DOMをサポートするためには光レベルを受信するハードウェアが内蔵されている事とそれを機器が要求する手順で提示する機能を備えている必要があります。そのために、サードパーティ製品はDOM機能を備えていないのが常識の時代でもありました。
「Specification for SFP (Small Formfactor Pluggable) Transceiver」
このように、使用する機器に合わせた”特注”が標準的であった時代に基本仕様書とされたのがINF-8074です。これには、SFPの機械的形状。基本的電気的特性、そしてI2Cを介して提供されるSFPの状態情報が定義されています。
DDM (Digital Diagnostic Monitoring)をサポートしていると記述されていれば、INF-8074に記載されているI2Cによる情報提供機能を備えていると解釈できます。しかし、DOM(Digital Optical Monitoring )は含まれていません。1G bps SFP全盛の時代にはDOMに関する標準仕様は存在せず従って汎用品ではDOM機能は利用できないとなります。
「Management Interface for SFP+」
"INF"という参考文章ではなく仕様書として公開されDOMの仕様について明記されています。また、拡張された部分はINF-8074では"reserved"とされていた領域ですので上位互換性もあります。2022年現在では1G bpsのSFPにもほぼ適用されている仕様です。
bit 6にDOMを備えているかどうか定義がありますので、option的位置づけです。備えている場合は、受信光レベル、送信パワー、送信バイアス電流、供給電圧、内部温度までがセットです。
「Specification for Management Interface for 4-lane Modules and Cables」
Rev 1.5からQSFP28も定義も追加。
QSFPの仕様上のDOMの記述はSFF-8636、6.2.5 Channel Monitors (Page 00h, Bytes 34-81)。
そもそも。QSFP以降では受信光レベルのモニターは標準機能で温度、電源電圧、送信出力がoption.
bit | Description |
---|---|
7-6 | Reserved |
5 | Temperature monitoring implemented (0b=Not implemented or pre-Rev 2.8,1b=Implemented) |
4 | Supply voltage monitoring implemented (0b=Not implemented or pre-Rev 2.8,1b=Implemented) |
3 | Received power measurements type. 0=OMA, 1=Average Power |
2 | Transmitter power measurement. 0=Not supported,1=Supported |
1-0 | Reserved |
受信レベルだけなら、0x08, 全て装備していれば0x0C。rev 2.8以降なら0x3Cとなります。
仕様上は、モニター機能が全てセットになっているSFP+の仕様であるSFF-8472と異なり備えているモニター項目が個々に指定されているのですが、SFP+対応のコードのコピペなのか指定を無視して情報を参照する機器が多いのが実態です。
DOMによって得られる測定結果の精度はあまりよくありません。特に光のレベルの精度には注意が必要です。
range | accuracy | |
---|---|---|
Temperature | -40 ºC and +125 ºC | +/-3 ºC |
voltage | 0 to+6.55 V | +/ -3% |
power | -40 to +8.2 dBm | +/-3 dB |
トランシーバー側がDOM機能を備えそれを示すEEPROM情報を応答しても機器では表示されないケースがあります。
byte | INF-8074 | SFF-8472 |
---|---|---|
13 | reserved | Rate Identifier |
19 | reserved | Length (OM3) or Cable length, additional |
36 | reserved | Transceiver |
60-61 | reserved | Wavelength |
62 | reserved | Fibre Channel Speed 2 |
92 | reserved | Diagnostic Monitoring Type |
93 | reserved | Enhanced Options |
94 | reserved | SFF-8472 Compliance |
「Tunable SFP+ Memory Map for ITU Frequencies」
DOM/DDMに直接関係ありませんが、tunableのトランシーバーで波長を指定する標準仕様です。